ホソツヤルリクワガタ
学名:Platycerus kawadai Fujita et Ichikawa,1982
分布:栃木、群馬、埼玉、長野、東京、山梨、神奈川、静岡

 藤田氏らが山梨県大菩薩産のコルリクワガタの中に、光沢の異なる個体が混ざっていることに気付き、1982年に新種ホソツヤルリクワガタとして記載1)
 基産地は、山梨県大菩薩。


上段:♂、下段:♀


1. 形態
 その名の通り、♂も♀も、スマートな体形で上翅の艶が強い。
 ♂はルリクワガタに比べて青味の強い個体が多いが、一部地域では黄色味の強い個体が高確率で混ざり、「キンイロホソツヤ」と呼ばれて珍重されている。
 ♀は青緑〜緑〜茶褐色に変化する。
 コルリクワガタ(のグループ)ほどではないが、♂も♀も産地による色彩の傾向がある。

 ♂の大顎は、短いだけでなく、基部外側が大きく切れ込んでおり、ルリクワガタと大きく異なっている。 


ルリクワガタ                     ホソツヤルリクワガタ

 ♀の脚は、コルリクワガタ♀のように黄褐色で、腹も安定して赤色となる。
 ホソツヤルリクワガタが生息している関東周辺のルリクワガタの♀の場合、脚は黄褐色気味の個体も混ざるが、腹部の赤い個体は稀であり、ルリクワガタ♀との簡単な見分け法になっている。


ルリクワガタ                 ホソツヤルリクワガタ

2. 分布
 関東周辺の高標高の場所にやや局所的に分布している。
 近年、新産地の報告がなされているが、栃木県(中禅寺湖で2例のみ)〜群馬県〜長野県〜埼玉県〜東京都〜神奈川県〜山梨県〜静岡県で記録がある。
 標高による住み分けはなく、ルリクワガタ、コルリクワガタ(のグループ)、ホソツヤルリクワガタが同所に生息しているポイントは多数ある。

3. 生態
 5月〜6月に発生。
 同所に生息するコルリクワガタ(のグループ)より少し遅れて発生するとされる。
 新芽採集の記録はあるが、コルリクワガタのように集中的に集まることはないようである。
  自身の採集記録:2006.6.3(1♀)
              2007.6.2(1♂+1♀)
              2008.6.7(3♂+1♀)
               2009.5.30(5♂)
              2012.6.16(1♂)
              2013.5.18(3♂)
              2015.5.10(1♂)
              2015.5.30(4♂)

 産卵はやや細い立ち枯れや木に引っ掛かったような落ち枝を好み、ルリクワガタ属特有の(・)マークを集中的に刻むことが多い。
 ただこのような材は過度の乾燥に晒されるケースが多いため、産卵マークがあっても幼虫の生育が認められないことがルリクワガタ属の中で最も顕著に認められる感じがする。
 ルリクワガタが優勢でない地では、直径20〜30cm程度の太い立ち枯れ、場合によっては1m近い太い倒木に産卵されるケースもあるようである。 





1)Fujita, H. et al., 1982. Elytra 10: 1-8


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