♂交接器内袋の観察

 2007年の井村有希氏によるニセコルリクワガタの新分類1)、そして2008年の久保田耕平氏によるコルリクワガタの新分類2)によって、ルリクワガタ属の♂交接器内袋の形状が、ルリクワガタ属の分類を考える上で重要だと言うことが明らかになりました。
 ルリ属をやるなら、♂の交接器内袋を比較出来ないと話しにならない感じ…。

 正直な所、自分には無理…。
 特殊な技術を持った方でしか実践できないものと決め付けていましたが、生展足中の個体なら、意外にも容易に確認・比較が出来ることが判ってきました!

 ということで、ルリクワガタ属の♂交接器内袋の(自分的)膨らませ方を公開します!
 
 井村氏のシリンジを使った物理的方法3)と、久保田氏による過酸化水素水を使った化学的方法4)があるようですが、私は前者の方法を使っています。

@道具
 シリンジは、ホームセンターの接着剤コーナーで入手した5mlを使用(井村氏は50mlを使われているようです)。
 注射針は27G(ゲージ)のものを使用。先端をヤスリで磨いで滑らかにしています。
 膨らませたゲニの区別をするため、ナンバーリング。
 そして、展足でも使っているピンセットを使用。

Aゲニの取り出し
 井村氏は〆てから1〜2日の個体が扱い易いとされていますが、私はやや強めの酢酸エチルで〆て、数時間後の個体で好結果を得ています。
 ♂の腹部を押すと交接器が出て来ます。 

 そして、ピンセットを使ってカット。
 第8腹節と第9腹節の間のようです…。

B膨らませ
 カットした交接器、この後展足する個体の尻部分の内臓、そして取り出した交接器のウェット部分ををティッシュで拭き取ります。
 そして、注射針をセット。

 指で空気漏れが無いことを意識しながら一気に加圧!
 膨らまなかったら針の位置を変えてもう一度。
 プクっと膨らむ瞬間、快感です!

 ここまでは目視ですが、完全に膨らんだかどうかの確認に、先日、偶然入手出来た旧式の実体顕微鏡を使っています。

C固定〜保管
 完全に膨らんでいるのを確認出来たら、ドライヤーの温風で乾燥・固定。

 個体と交接器の対応を間違えないようナンバーリングは慎重に…。



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1)Y. Imura, 2007. Elytra 35(2) 471-489
2)Kohei Kubota et al., 2008. Biogeography 10: 79-102
3)井村有希, 2008. 鰓角通信 (16):45-53
4)久保田耕平 . 月間むし (462):6-21


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