ルリクワガタ属の♂交接器内袋の比較

 ここでは、ルリクワガタ属♂成虫の交接器内袋の形状を比較してみます。
 生展足中の個体なら、何とか90%以上の確率で内袋観察が出来るようになりました。
 例えば、1♂しか確保できなかった産地の場合、半端でないプレッシャーの中、膨らませることになります。
 また、膨らませて実体顕微鏡で観察できても、その後萎んでしまうものも散見されました。

 形態は、参考文献1)-4)の通りの印象ですが、一部、あれっ?と感じる個体も混ざりました。
 今後、経験を積む必要がありそうです。

@ルリクワガタ(Platycerus delicatulus)
 先端部が水牛の角のようにニョキニョキと膨らみます。


ルリクワガタ(群馬県産)


ルリクワガタ(山梨県産)

 2010年4月、東京都ご在住のO様から、長崎県産の亜種、ウンゼンルリクワガタ(P.delicatulus unzendakensis)の生体をお借りして、内袋観察をさせていただくことができました。
 形態は基亜種と同じ印象でした。
 O様、ありがとうございました!


ウンゼンルリクワガタ(長崎県産)

Aホソツヤルリクワガタ(Platycerus kawadai)
 ルリクワガタと同様に先端部が水牛の角のようにニョキニョキと膨らみます。
 ルリクワガタに比べて、その先端部は太短いとされていますが、個体差も大きいようで、♂交接器内袋だけでルリクワガタとホソツヤルリクワガタの同定をするのは今の所私には出来ません…。


ホソツヤルリクワガタ(東京都産)


ホソツヤルリクワガタ(静岡県産)

Bコルリクワガタのグループ
 コルリクワガタのグループの場合、
  a) lobeT、lobeUと呼ばれる部分
  b) 基部の突起対の有無
  c) 先端部の形状
を比較することが重要なようです。

B-1 コルリクワガタ(Platycerus acuticollis)
 関東周辺に生息するコルリクワガタの仲間の中では、最も特徴的な形態をしています。
 基部の突起対は無く、先端部は両側に膨らみません。
 また、lobeTとlobeUの周辺はボコボコボコと小さく、複雑に膨らむ感じです。
 内袋全体は、細長い印象です。
 キチン質の茶色の線は細く貧弱です。


コルリクワガタ(群馬県産)


コルリクワガタ(栃木県産)

B-2 ユキグニコルリクワガタ(Platycerus albisomni)
 交接器内袋の形状は同じで、外観の違いから亜種とされているチチブコルリクワガタ(P.albisomni chichibuensis)も含まれます。
 基部の突起対は認められないとされ、先端部はダンベル状に両側に膨らみます。
 lobeTが融合する個体とlobeTが2つに分離する個体があるようですが、その形態はコルリクワガタの仲間の中で最も変化がありそうです。

 B-2-1ユキグニコルリクワガタ基亜種(Platycerus albisomni albisomni
 基部の突起対は認められないとされ、先端部はダンベル状に膨らみます。

 


ユキグニコルリクワガタ(新潟県産)


ユキグニコルリクワガタ(長野県産)

 lobeTのlobeU側(中央部)が極端に張り出した個体。
 上の個体とは別物の印象です。 


ユキグニコルリクワガタ(長野県産)

 側面からみると、上のコルリクワガタとは大分異なった形状です。 


ユキグニコルリクワガタ(長野県産)

 B-2-2 チチブコルリクワガタ(Platycerus albisomni chichibuensis
 
交接器内袋の形状はユキグニコルリなのに、外観はトウカイコルリ、というのがチチブコルリになるようです。
 交接器内袋は、別種とされたトウカイコルリとは明らかな差がありますが、その生息境界線付近では、両種の移行的特徴を持った個体が現れる印象です。


チチブコルリクワガタ(群馬県産)


チチブコルリクワガタ(長野県産)

 2010年5月、埼玉県ご在住のたーさんからチチブコルリの基産地に近い地でゲットされた貴重な個体をお借りすることが出来ました!
 チチブコルリの基産地は採集禁止となっていますが、その近くの採集可能エリアでゲットされたコルリ、やはりユキグニタイプでした!
 たーさん、貴重な個体をお借り出来て、大感謝です!!
  
 


チチブコルリクワガタ(埼玉県産)

B-3 トウカイコルリクワガタ(Platycerus takakuwai)
 交接器内袋の形状は同じで、外観の違いから亜種とされているキンキコルリクワガタ(P.takakuwai akitai)、シコクコルリクワガタ(P.takakuwai namedaiも含まれます。

 
B-3-1 トウカイコルリクワガタ基亜種(Platycerus takakuwai takakuwai
  基部の突起対が認められるとされ、先端部は丸く膨らみます。
  lobeTとlobeUの部分は融合傾向が高く、座布団のような形状になります。


トウカイコルリクワガタ(東京都産)


トウカイコルリクワガタ(東京都産)

 基部の突起対。
 もっと鮮明に膨らむ個体もあります。

 B-3-2 キンキコルリクワガタ(Platycerus takakuwai akitai
  lobeTとlobeUの部分は融合していて、座布団のような形状になります。

  2010年5月、岐阜県ご在住のきっちゃさんより貴重な生体を戴くことができました。
  きっちゃさん、ありがとうございました。


キンキコルリクワガタ(岐阜県産)

B-4 ニシコルリクワガタ(Platycerus viridicuprus)
 交接器内袋の形状は同じで、外観の違いから亜種とされているキュウシュウコルリクワガタ(P.vilidicuprus kanadai)も含まれます。
 2010年4月、兵庫県ご在住のW様より貴重な生体を戴くことができました。
 W様、ありがとうございました。


ニシコルリクワガタ(島根県産)


ニシコルリクワガタ(島根県産)

Cニセコルリクワガタのグループ

C-1キイニセコルリクワガタ(Platycerus akitaorum)

 2010年11月、鍬路さんより貴重な個体を頂戴してしまいました。
 今まで見たことの無い形状に唖然…。
 ルリクワガタ属の中では、最も膨らませ易い形だと感じました。
 鍬路さん、ありがとうございました!


キイニセコルリクワガタ(奈良県産)


キイニセコルリクワガタ(奈良県産)

 

1)Y. Imura, 2007. Elytra 35(2) 471-489
2)Kohei Kubota et al., 2008. Biogeography 10: 79-102
3)井村有希, 2008. 鰓角通信 (16):45-53
4)久保田耕平 . 月間むし (462):6-21


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